• 2018/02/10

「ふるさとの台所」復刊の立役者!畠中智子さん

高知の郷土料理を伝える本「ふるさとの台所」 この30年前のベストセラーを復刊させ、現代に再ブームを巻き起こしている畠中智子さんに、お話を聞いてきました!

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1987年(昭和62年)「ふるさとの台所」という本が発刊されました。高知の郷土料理と暮らしを綴ったこの本は、当時の高知県では異例ともいえる1万3000部を売り上げベストセラーとなりました。
その後時代とともに書店から消え人々から忘れられていたこの本は、なんと2016年4月に復刊され、現在でも重版となったり関連イベントを開催するなどインパクトを与え続けています。

「高知県各地域の日常料理を紹介する」という、30年前はそれほど特別な意味を持たなかったこの本が(それにしてもじゅうぶん丁寧にまとめられた、良書ではあるのですが)郷土文化が失われつつある現代においては、ものすごく貴重で重要なテーマを持っていると気づかされます。

果たしてこの「ふるさとの台所」は、どのようなきっかけで復刊するに至ったのでしょうか?
そしてこの本が教えてくれる、郷土文化のあり方とは何なのでしょうか?
「ふるさとの台所」復刊の仕掛人である畠中智子さんに、そのいきさつを伺ってきました!

右が30年前の「ふるさとの台所」、 左が復刻版

 

運命的に再会した本が、畠中さんを突き動かした!


畠中智子さんは、どうして、この本を復刻されようと思ったのですか?
そもそも、30年前の本もご存知だったのでしょうか?


30年前「ふるさとの台所」が創刊されたとき、私も頂いたんです。
この本をデザインされた梅原真さんから渡されて「いや~かわいらしい!えい本できたね~」って。
当時はふるさとの料理が貴重だなんてそんな価値観はまだ無くて、だからその時はまだ「良い本だね」ぐらいで終わってました。

30年ぶりにたまたまこの本に巡り合って、改めて見ると・・・いやこれ、すごい本やん!!!って(笑)


久しぶりにこの本に出会ったのは、どういう経緯だったのでしょうか?


それはもうホントに突然、光り輝きながら目の前に降りてきたようでした!

川村一成さんという南国市の農家の方が、30年前にこの本を数十冊まとめ買いしてらっしゃいました。彼は全国的にも有名でたくさんの人がお話を聞きに来るので、そういった人たちに、この本を渡してたそうなんです。
そして最後に残った2冊の新品状態のこの本を、私に送ってくださったんです!
「おまんに送っちょったら、なんかえいようにしてくれるろう」って(笑)
※土佐弁訳:お前に送っておいたら、何か良いようにしてくれるだろう

そうして私の元に小包でこの本が届いて、うわ!なつかしい~~~!!!
本当に運命のような、突然の再会だったんです!


すごい!
まるで何かの啓示のようですね・・・!


でしょでしょ?!

 

30年前の「ふるさとの台所」
当時の高知県知事・中内力さんの前書きが載っています。

この版は昭和62年の第2刷でした。印刷は片岡印刷。

 

復刊は・・・どこも「ようせん」
そのとき畠中さんがとった行動は?


そんなドラマティックな再開を果たしたこの本を今あらためて見てみると、30年前には感じなかったとんでもない価値を秘めていると気づきました。
そしてぜひ、今この時代に、もう一度ほしいと思ったんです。
また、30年前に入手してない若い人たちから「私もほしい~!」と言われることが多かったんですが、でも今は本屋さんに売ってないし・・・

じゃあ復刻してもらおう!ということで、当時の発行元であった団体関係者や、事務局があった高知県などに働きかけました。でも、どこも「ようせん」といって断られてしまったんです。
※土佐弁訳:ようせん=できない

どっこも「ようせん、ようせん」って・・・ほやったら、私がやってかまん?という(笑)


さすがの行動力!


そこから復刊に向けて動き始めたんですが、いろいろ苦労がありました。
まず、30年前のこの本の版権を誰が持ってるのか、わからなくなってましたからね!
県には無いし、料理を教えてくれたおばちゃん達も知らないし、デザイナーの梅原真さんも「俺も持っちょらんぞ」って言うし(笑)
そこで「ふるさとの台所」復刻を熱望する会という組織を立ち上げて、具体的な問題点をいろいろと解決していきました。

あとは、30年前は版下による制作(アナログ製版)だったので、デジタルデータが全く無いという問題もありました。昔の本をスキャンして、PDFで読み込んで出来上がったんです。

そして何よりの奇跡は、梅原真さんが当時の写真をすべて残しておいてくれたことなんです!
この本の写真はデジタルデータではなくフィルムカメラで撮影されているのですが、梅原さんにとってもこの仕事は特別な意味があったそうで、処分せずに残しておいてくださいました。

それらの写真をお借りして、30年前は白黒だった写真をカラーに差し替えました。こうして「ふるさとの台所」が、より色鮮やかになって、蘇る事ができました!
かつて制作に関わった人の中には、当時もカラーにしたかったけど予算の都合で白黒になってしまった経緯があったので今回「夢がかなった!」と言ってくださる方もいました。本当にいろいろなことがタイミング良く重なって、奇跡的に復刻できた本なんです。

30年前の白黒版(上)と、同じ内容のカラー復刻版(下)

 

「ふるさとの台所」が教えてくれる、本当の地域おこし


それだけ多くの人が復刻を熱望し、協力をされるのも、この本にそれだけの魅力と価値があるからなんですね。


この本に書かれている地域の食を見つめ直すというテーマは、地域おこしとか地方創生をする上で、すごく基本的で重要な価値観だと思います。

地方創生という大義名分のもと新しいモノを作ったりハードにお金をかけるのは、何か違う。
そうじゃなく、地域で長く営まれてきたモノに丁寧に目を向け、現代なりのやり方で磨き直してあげればそこから、本当に地域に根ざした新しい価値観が生まれるんじゃないかなと思います。
そういった本当の地域おこしのために「食」というのは良いテーマですよね。「食」っていうのは、無関係な人がいませんから。


ホントにそうですね!
僕が今ちょっとこの本を見てみても、知らない料理や食材の名前がたくさん・・・今の時代に知られてない、ふるさとの姿を知ることができます。


そうなんです!
私はただ本を蘇らせて終わりじゃなく、そこに書かれてる内容にこそ、今の世の中に広がってほしかったんです。

実際に「ふるさとの台所」が復刊されて、たくさんの人に読んでもらえて・・・だけどそこで問題が起きます。作り方がわからん!と。
というのも30年前には普通だった料理法が、今の時代には難しかったり合わなかったりするものが多いんです。

例えばここにワラビをアク抜きすると書かれてますが、今の時代アク抜きのしかたを知らない人も多いですよね。それどころか、既にアクが抜かれた状態で売られているワラビもあります。イタドリも塩漬けして、塩が抜かれた状態で売られてます。
ですから、アク抜きから始めなくても、そこからのレシピでいい訳ですね。

他にも、焚き火を焚いてニガタケを皮のまま焼くなど難易度の高い調理法とか、臭木菜(くさぎな)といった若い世代の人は聞いたことない食材なども載っています。

「くさぎな」を使った料理のページ。筆者も「くさぎな」というものは聞いたことなかったのだが、知らずに食べたことあるのだろうか?

 

このように、わからない調理法や食材について教えてほしいという声が、あちこちから上がってきました。そしてこの「ふるさとの台所」のレシピを作る料理教室や、掲載された料理を味わうイベントなど、様々な企画が催されたんです。
これこそ「本を蘇らせて終わりではない、本の中身である文化が広まっている」状態で、私が本当にやりたかったことなんです!

ふるさとの台所 | 株式会社わらびの
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株式会社わらびのwebサイト内「ふるさとの台所」ページ。
「まなぶ」「つくる」「かう」「あじわう」などのページで、本を題材にした様々なイベントや調理法を見ることができる。

 

「ふるさとの台所」から生まれたムーブメント
時代に求められる本当の価値


webサイトを拝見すると、派生イベントの種類の多さに目をみはります。
レシピを作ってみる調理実習会、料理を味わう宴会イベント、本に出てくる食材を買うことのできる台所市、などなど・・・多種多様なアイデアが無限に広がる様子から、この本の懐の広さと中身の濃さが窺い知れます。

そして復刊して間もなく2年ですが、この2年間に開かれたイベント数の多さ!にもまた驚かされます。
高知県民の宴会好きのせいもあるかもしれません(笑)が、何より、現代の人にこの本の内容が求められているという証でしょう。

こういった幅広く、意義のある活動内容が認められたのでしょうか。なんと高知県地場産業奨励賞を受賞したのです!

第32回高知県地場産業奨励賞いただきました: 高知のモノ・コト・ヒトカタログ
第32回高知県地場産業奨励賞いただきました,高知で暮らして素敵なこと、あれこれ幅広く取扱中!

平成29年度(2017年度)第39回 高知県地場産業大賞受賞者一覧は → こちら

 

30年前は、こうした郷土料理に重要な意味があるとは考えなかった・・・
この本の内容が賞を取るほどの文化的価値を持つとは思いもよらなかった・・・
社会的にはそういう価値観だったかもしれません。

とはいえ、この本を丁寧に丁寧に作った人たち、この本を目にしてステキ~~!!と思った人たちの心の中には、やはり十分に価値があったのでしょう。
だからこそ、30年を経てもまだ手元に残している人がいて、覚えてる人がいて、そして復刻したい、読みたいと思う人がこんなにも多かったのでしょう。

最後に、復刊に際し梅原真さんが語ってらした言葉を引用したいと思います。

「これは土地の文化がリアルに伝わる地元学的な一冊でもある。単なる料理本ではない、その力学の違いに意味があるわけで、それが30年経って復刊される理由にもなっているのではないか」

株式会社わらびのwebサイト内「ふるさとの台所」ページ(https://waravino.com/furusato/
より引用

 

冒頭部のカラーページ。丹念な取材内容と、美しい写真が並ぶ本当に価値ある名書だ。

 

取材協力:

株式会社わらびの
https://waravino.com/

 

この記事は株式会社響建設によって提供されています。
響建設はふるさとの文化を伝え、ふるさとと共に輝くヒトを応援します。

 

この記事を書いたヒト

chochono

東京、中目黒在住のダンサー。fulsatoto編集長。魅力的なhitoへのインタビュー、東京での高知文化の活躍などを紹介します。

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