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高知市和泉町に「造形教室」という、小中学生・美大受験生に美術を教えるアトリエがあります。
ここは有名なマンガ家・西原理恵子さんや、フィギュアイラストレーター・デハラユキノリさんをはじめ、芸術、デザイン、マンガ、ファッションなど・・・様々な分野のクリエイターを何百人も輩出してきた、とっっってもハイレベルな美術教室なのです!
そんな、高知のアートシーンに多大な影響を与えてきた、高知のエコール・デ・ボザールと言っても過言ではない造形教室に、いろいろお話を聞いてきました!
※エコール・デ・ボザール・・・350年の歴史を誇るフランス国立美術学校。建築、絵画、彫刻分野等で多彩な人材を輩出している。
実は筆者(chochono)もこちらの卒業生の一人なのですが、造形教室がいつからやっているのか全然知らない・・・かなり古そうな気はするのですが。
ちょっと長い話になります。
一番最初は、私が高校の同級生から「自分の子供も含めた近所の小学生を10人ぐらい集めるから、美術を教えてほしい」と頼まれたのがきっかけです。
その人のご自宅(一橋町)で、週に一回ぐらい美術教室を開いてました。
それが40年近く昔ですね。
40年!!
かなり歴史があるとは思ってましたが、そこまでとは・・・。
しばらくすると私が、その家のすぐ近く(愛宕4丁目)に引っ越してきたんです。
借家でしたが、そっちの私の家の方に来てもらうようになり、台所を仕切ったようなスペースで、小学生10人ぐらいの美術教室が開かれることになりました。
現在は高校生のための美大受験クラスと、子どもクラスがありますが、最初は小学生だけだったんですね。
当時は少子化になる前で子供も多かったので、知り合いが知り合いを誘って、という具合に生徒はどんどん増えていき、教室も毎日開かれるようになりました。
さらに知り合いの人から「美大受験をする高校生の子供を教えてほしい」と頼まれ、週に一回ほど高校生も教え始めたんです。
その子がさらに友達を連れてきて・・・その頃にはもう、借家の私の家ではまかないきれないほど大人数になってました(笑)
そこで、今のこの場所を借りることになりました。それが1982年ですね。
そんな経過で生徒も増えてきて、このフロアの奥の部屋で高校生の美大受験コース、手前の部屋で子どもコースを教えるスタイルになりました。
私も本業もあり忙しかったので(※都築房子先生は長年、土佐中学校・高等学校で美術の非常勤講師をされていました)スタッフも入れ、現在の「造形教室」の形になってきたんです。
造形教室の卒業生には、有名な西原理恵子さんやデハラユキノリさんをはじめ、様々な分野で活躍する人材がたくさんいらっしゃいますよね。
造形教室卒業生で、各ジャンルでご活躍されている人たち
(※あくまでもライターchochonoが調査した範囲内です。ここに掲載している以外にも、活躍されている人はたくさんいらっしゃいます)
数の多さもさることながら、卒業生の進路先のジャンルも様々ですよね!
漫画家やイラストレーターなど平面系の他にも、彫刻など立体系もいらっしゃいますし、他にもデザイン、評論、ファッション、映像などなど・・・とても多岐に渡っています。
これだけ色々な進路の方向性を示すことのできる美術教室というのは、相当珍しいのではないでしょうか。どのような教育方針だったのですか?
教育方針として、そんなに言葉にできるものがある訳ではないんですが・・・ずっとやってきて今になって思うのは、「寄り添うことしかできない」という事ですね。
こちらは方法や技術を教えることしかできませんが、相手の受け取り方は様々ですよね。面白いと思ったり、ピンとこなかったり、人によっては教わった方法論がありがた迷惑になったり・・・生徒たちは一人ひとり違うので、そこまで干渉することはできないんです。
あくまでも主役は本人であり、私たちは美術を押し付けるのではなく、「いかに寄り添えるか」ということだと思います。
それが小学生でも受験生でも。
なるほど。
言い方を変えれば「生徒の個性、自主性を尊重する」ということですね。
こちらの卒業生にいろんなキャラクターがいて、いろいろなジャンルで活躍している、その理由が見えた気がします。
私たちの時代の美術教育は、生徒が描いた絵のダメな箇所を、先生が消して描きなおすというものだったんです。
ずっとそのことが、理不尽で納得がいかないと思っていました。
確かに先生の言うことは正しいし、先生の方が明らかに上手なんですが、でも、自分なりに考えて描いてるのに、先生のやり方を一方的に押し付けられてるような気がして。
何よりも、生徒みんなの絵が先生とそっくりになってしまうのを見て、「何か違うんじゃないか」という思いをずっと持っていました。
ですから私は生徒の絵に手は加えず、できるだけ言葉で説明し理解してもらい、その人なりの描き方を身に付けてもらった方が良いとは思ってました。
あとは、私が絵描きじゃないということが大きいですね。
(※都築さんは立体造形作家)
絵が描ける先生は、悪気はなくてもついつい手を加えたくなるんだと思いますが、私は絵描きじゃないので一歩離れて見てられるというか。
そういえば確かに、僕も先生からは描き直しされたことはありませんでしたね。
本当にダメダメな子には、さすがにちょっと手を加える時もあるけどね(笑)
まあでも、結局はそれぞれが持っている自分の個性を磨いていくしかないですからね。一人ひとり、持っているものは違う訳なので。
それに、美術の世界には正解がないというのもあります。
力強い絵を描く人と繊細な絵を描く人を比べて、どっちが上かなんて決められないですから。
造形教室に通ってる1~2年間が、その人にとって楽しくていい時間であればいいな、と思います。たとえ受験のために通ってるとしても。
続いては、造形教室スタッフの井関さおりさんにお話を伺います。
井関さんが考える、造形教室の魅力とは何ですか?
美術全般の魅力、とも言えるんですけど・・・一人ひとりにそれぞれ違った魅力があって、それを見出していけるところかな、と思います。
ダイナミックな絵が描ける子がいれば、緻密な工作が得意な子、発想がぶっ飛んでて誰もしないような見立てをする子もいたりして・・・みんな違ってみんないい、ということが味わえます。
子ども自身にとっても、そういう「自分らしさを発揮する場」になってるのはすごく良いと思いますしね。
数値化して子供を測るとか優劣をつける教育は、競争促進するためにはある種必要だと思いますが、美術はそういう世界じゃないので。
子供の「自己肯定感を育てる」ことができて、そしてそれは、大人にとっても大事だと思うんです。
生徒さんが自分の価値を発見していく様子に、私が楽しませてもらってるという面もありますね(笑)
だからこれは、私にとっての造形教室の魅力でもあります。
子供たちの作品とか、発想は本当におもしろいんですよ。よくそんな見立てができるな・・・と感心したり。
例えば、みんなでお花が動くおもちゃを作っていたのに、この子だけなぜかウツボに。
節分ぐらいの時期に、射的のような工作をしたんですよ。みんな射的の的に鬼を描いて、それをてっぽうで撃つ、というような。
でもある子供は、なぜか射的の的にアイドルの女の子を描いて。
で、「アイドルがてっぽうで撃たれるのはかわいそう」といって、てっぽうの弾じゃなく「ワ~」とか「キャ~」といった歓声が飛んで行くようにしたんです。
でも自分でアイドルを描いておきながら、「撃たれるのはかわいそう」っていうのもよくわからなくて、微笑ましいですね。
これは「お金川」です。
「おかねがわ」は、タヌキが流すニセのお金を大人たちが取りに来るという川なんだそうです。
これ、すごくいい!
「お金川」のネーミングセンスといい、風刺のきいた設定といい、シュールでカオスな雰囲気が、すごくおもしろいです!
心に刺さりましたか(笑)
作った子が「お金川」の妄想をほとばしらせて、すごく大量の文章を書き連ねたものもあるんですよ。
この川は、お金川、長くするとお金がながれる川です。・・・(中略)・・・子どもの日いがいはお金はながれません。子どもの日は、おとながお金川のチャイムをきいていっせいにきます。サラ金のひともきます。プロは40こ100おくが入った箱をつります。4000おくとっておとなだけでつかおうとするひともいます。
・・・(中略)・・・
タヌキがお金を上りゅうでながして、中りゅう→下りゅうとながして日本をでたあとハワイ→アメリカ→グリーンランド→ドイツ→イタリア→アフリカ→中国→日本として返っています。・・・(中略)・・・お金川はタヌキが正月は子どもだけ金をもらってずるいと思ってげんかくでつくった川です。
・・・(以下略)
す、す・・・すごい!
世界観とかサイドストーリーとか、めっちゃ作り込まれてる!
この子は逸材ですね~。
これは、紙の博物館が開催した「紙と遊ぼう展覧会」に出したものですね。「紙で作った工作」を募集している子ども向けコンテストです。
こういう作品はコンテストは通らないんですよね。コンテスト規定として文字を書いてはダメだし、紙を立体的に使った子供らしい作品の方が好まれやすいので。
でもこういうユニークな作品のことも、評価していけたらいいですよね。
「紙と遊ぼう展覧会」展示の様子。他は学校単位で出しているが、造形教室では子どもを募って、個人単位で出すのだそう。
毎年やっているという、干支の掛け軸。お祖父ちゃん、お祖母ちゃんへのプレゼントにして、喜ばれることも多いとか。
幼児~中学生まで造形教室に通い、毎年これを作って、十二支全部そろった子どももいるそう。
箱の中に町があり、展開していく工作。展開図と、中の空間にどう配置するかを勉強するための、小学校上級生向けの課題。
「戦うサムライ」五月人形の時期に上級生向けに出された課題。ダンボールで組み立てた上に黒と金のスプレーで塗装。
ゴムの仕掛けにより咬みつく、ギミック式の工作(※画像クリックすると、ギミックの動きがわかるGIFアニメが開きます)
両方紅茶です!
両方紅茶【りょうほうこうちゃ】
造形教室で夕方の休憩時に出してもらえる、砂糖とミルクを両方入れた紅茶のこと。
《類語》
両方コーヒー、砂糖紅茶、なし紅茶、など。
取材協力:造形教室
この記事を書いたヒト